相続対策の信託契約の一部が公序良俗違反により無効 【家族信託】
こんにちは。
上三川の司法書士の市村です。
今回は、家の跡継ぎのための受益者連続型信託の一部について、公序良俗により無効となった判決のお話です。
ポイントは以下の2点です。
1. 遺留分減殺請求制度の潜脱の目的で行った信託契約を無効とした。
2. 遺留分減殺請求の対象となるのは、形式的に移転した不動産そのものではなく、受益権であると判断した。
【登場人物】
被相続人 X
相続人 長男 A (原告)
相続人 次男 B (被告)
相続人 次女 C
1、 全財産の三分の一を次女に、三分の二を次男に贈与する旨の死因贈与契約を結ぶ。
2、 Xを委託者、Bを受託者、受益者をX ⇒ 1/6A 、1/6C、4/6B ⇒ Bの子の信託契約を結ぶ。
信託財産は、不動産と現金300万円。
不動産の内容は、①納税資金用の売却予定不動産、②賃貸物件、③自宅等と使用貸借中の価値の低い土地
相続開始後に、長男Aが信託契約と死因贈与契約により自己の遺留分が侵害されたとして遺留分減殺請求をしました。
裁判所の判断は、現金300万円と不動産①と②については信託契約は有効として、
不動産③の部分について公序良俗違反により無効としました。
自宅は売却する予定もなく、①は既に売却済みで残りの使用貸借されている土地等は資産価値がなく、
これは遺留分減殺請求を回避するための信託とみなされたようです。
そして、信託による土地等の所有権移転は形式的なものなので、遺留分減殺請求の対象は受益権とするべきとのことです。
ちなみに、死因贈与契約に対しても遺留分減殺請求権を行使されますが、契約上は有効です。